男性への性的虐待についての「事実と偏見(神話)」
-- Myths About Male Sexual Abuse --
【補1】「男性サバイバー=加害者」でないことに注意!
【補2】 同性愛と、同性間の性暴力をはっきり区別してください。
下記は男性(少年)にたいする性的虐待の7つの「事実と偏見」に関する短いくて分かりやすい文章です。
男性性被害にたいする偏見や間違った知識には、実に根強いものがあります。ここに述べられているような偏見にとらわれたままでいると、サバイバーもサポーターも適切な回復の道を思うように進めません。
また、2004年の日本には、男性性被害を専門に調査・研究する研究者は、1人を除いてまだいません。それどころか、まちがった解説や有害な情報を説く精神科医やカウンセラーや法律家すらいます。そのため男性性被害に関する偏見やいいかげんな知識が社会に流布することは、きわめて有害です。
それゆえ、下記のような内容について理解しておくことは、サバイバー、サポーター、専門職、一般人を問わず、きわめて重要ですので、よく読んでおいて欲しいと思います。
原文は英語で、アメリカの男性サバイバーを支援するNPOのサイト「National Organization on Male Sexual Victimization」から転載と翻訳の許可をいただいています。じょうずな訳文とは言えないのですが、翻訳は‘くろたけ’が行いました。注もくろたけが付けました。翻訳や用語の誤りに気づいた方はご一報ください。 原文はこちら。
タイトル「事実と偏見」の「偏見」は、原文では「Myths(神話)」となっています。神話とは、性被害に関しての偏見や、間違った思い込み・知識・情報のことです。日本では「レイプ神話」などと、神話という言葉をそのまま使うことがありますが、ここではわかりやすく偏見として訳してみました。
転載・引用は禁止です。 2001年
男性の性被害(注1)の事実と偏見
偏見1:少年や男性は性被害にあうことはない。 この偏見は、幼い少年であっても、男性は性被害にあうはずがなく、また性被害にあっても傷つくことがないという考えを表しています。 これは「男らしさ」というジェンダー(注2)を通じて社会的に刷り込まれており、ときには「マッチョ」な男っぽい男性イメージと結びつけられて語られることがあります。 わたしたちの社会では、男性はたいへん幼い時から自分で自分を守ることができなければならないと教えられています。 しかし、実際は少年といえども、加害者よりずっと弱く傷つきやすい子どもにすぎず、反撃したりやり返したりすることはできません。 なぜ反撃したりやり返したりできないのでしょうか? 加害者は身体も大きく、力も強く、知識も被害者の少年を上回っています。 こうしたさまざまな力が、子どもよりも優位な立場にある者によって悪用されるのです。 しかも、加害者は少年の歓心を引くためにおこずかいやプレゼントなどを用いたり、ときにはあからさまに脅すなど、子どもを性的に搾取できるものならなんでも利用します。
偏見2:性被害の少年の大半が、同性愛の男性から加害されている。 少女を性虐待するペドファイル(子どもを性行為の対象にする人)(注3)が異性愛者として振るまっているように、少年を性虐待するペドファイルもまた同性愛的な傾向を示していません。 加害者の大半は、被害者の性別や年齢にそれぞれの好みを持っていますが、少年を探しているペドファイルもそのほとんどが同性愛者ではありません。彼ら加害者は、あくまで子どもを性の対象に選ぶペドファイルなのです。
偏見3:性虐待を受けているときに、少年が性的な刺激や快感を感じたならば、それは少年みずからが喜んで参加しているのであり、また楽しんでいる。 現実には、男性は苦痛や恐怖などトラウマ(注4)となるような状況であっても、性的な刺激を受けると、勃起(ぼっき)など身体が反応します。 加害者の更正にあたるセラピストたちは、加害者が虐待の事実が露見しないために、少年の身体が性的に反応したことを、少年がよろこんで参加した証拠として悪用することを知っています。たとえば「ほら、君もほんとうは好きなんだよ」「君だってこうして欲しいと思っているんだよ」などと言って、被害者をだまします。 虐待されたときに性的に反応してしまった男性たちの大半が、罪悪感と恥ずかしさで一杯になります。視覚や聴覚をふくめ身体的な反応は、性的な状況であたりまえに起きることと言っていいでしょう。 しかし、だからといって、子どもがそのような性的な体験を望んでいたということにはなりません。また、その意味を理解していたわけでもありません。
偏見4:少年は性虐待を受けても、少女よりもトラウマになることが少ない。 男性は性虐待によって悪影響を受けることが少ないとする調査がある一方で、より多くの調査が、男性も女性も、長期にわたる悪影響を受けることを明らかにしています。 とりわけ男性は性虐待を受けた事実を社会から否定されたり、なかなか認めてもらえなかったりすることで傷つくことがあります。その結果、男ならばじっとこらえて苦痛に耐えなければならないと信じ込んでしまうことで傷を深くしてしまうことがあります。
偏見5:男性から性虐待を受けた少年は、もともと同性愛者であるか、いずれ同性愛者になる。 性的指向性(注5)がどのように発達するかについてはいろいろな理論がありますが、性科学の分野の研究者たちは、幼いころの性体験がその後の青年や大人になっての性的指向性に影響を与えるとする考えを信じていません。 そもそも、ある人が他人を同性愛者にしたり、異性愛者にできるなどということはありそうもありません。性的指向性というのは複雑であり、ある人がなぜ自分を同性愛者や異性愛者や両性愛者であるとみなすかという問いに対する唯一の解答とか理論はありません。 男性から性虐待された場合も、女性から性虐待された場合も、少年や少女の早すぎる性体験は、その子の性的なアイデンティティと指向性に混乱をもたらすとともに、多方面にダメージをあたえます。 男性から性被害を受けた多くの少年が、自分には男性を惹きつけるなにか性的な魅力があると誤って信じていたり、自分は同性愛者ではないかとか、女っぽくて男らしさに欠けるために被害にあったのではないかと誤って信じています。 再度言いますが、これは真実ではありません。少年に惹かれるペドファイルならば、子どもに体毛がないとか、大人のような性的な容姿をしていないことに、性的な刺激を覚えると証言することでしょう。 ペドファイルが成人との健全な性的関係を発達させ維持する能力を欠いていることこそが問題なのであって、少年の性的に幼い容貌に問題があるのではありません。
偏見6:性虐待を受けた少年は、犠牲者がさらなる犠牲者を生み出すように、他人にたいし性虐待を繰り返す。 これはたいへん危険な偏見です。というのは、この偏見は、被害にあった少年にいずれ加害者になる運命だという最悪の烙印を押すことになるからです。 このため助けを必要としてるはずの少年が、潜在的な加害者としてあつかわれてしまう可能性があります。 加害者のなかには過去に性虐待された体験を持つものが多いということも事実ですが、しかし、被害にあった少年の大半が加害者になるというのは、あきらかに事実ではありません。 ジェイン・ギルガンJane Gilgun、ジュディス・ベッカーJudith Beckerとジョン・ハンターJohn Hunterは調査を通じて、性被害にあったことのある加害者と、加害したことのない性被害者のあいだの根本的な違いを明らかにしています。 すなわち、加害したことのない少年は被害にあったそのことを誰かに話しており、しかもその少年の生活に大きな影響をあたえる人々から信じてもらうことができ、サポートも受けることができていました。 もう一度繰り返しますが、男性性被害者の大半が青年や大人になって加害をしていません。青年となって加害者となった被害者も、若い内にサポートを得ることができたならば、大人になってから加害者となることは普通はありえません。
偏見7:女性が加害者のばあい、少年や青年は性行為をしてもらえて幸運だったと喜ぶべきである。 実際には、早すぎたり強要されたセックスは、母からであっても、あるいは、おば、姉、ベビーシッターなど少年より優位な立場にある女性から行われれば、少年や青年に少なからず混乱を引き起こします。 ひどい場合にはコントロールできない怒りに駆られたり、抑うつなど、いろいろ問題を引き起こします。 自分よりも優位な立場にある人から性的な「モノ」として扱われることは、男性であろうと女性であろうと、常に虐待的であり、時にダメージをもたらす体験となります。 ★ ☆ ★ ♪ ♪ ♪ ★ ☆ ★ ♪ ♪ ♪ ここに述べてきた偏見を信じることは、危険であり有害なことです。 社会がこれらの偏見を信じ、子どもに幼いときからこれらの偏見を教え続けているかぎり、男性サバイバーの存在が社会に認知されず、必要なサポートを得ることはできないでしょう。 社会がこれらの偏見を信じているかぎり、性虐待された男性は他人を虐待することによって自分の痛みに耐え続けるような少数のサバイバーに結びつけられて考えつづけられるでしょう。 性虐待にあった少年や男性がこれらの偏見を信じ続けているかぎり、恥ずかしさと怒りを感じ続けなくてはならないでしょう。 性虐待にあった少年や男性がこれらの偏見を信じ続けているかぎり、「被害者に落ち度がある」という別の偏見の悪影響をより強く受けることになるでしょう。「被害者に落ち度がある」という偏見は、被害にあったすべての子どもたちをつねに苦しめる破壊的な偏見です。 性虐待はけっして子どもの落ち度ではありません。ところが加害者はこれらの偏見を被害者に信じさせるとともに、加害者のみがつねに負うべき責任を被害者に押し付ける巧妙さに長けています。 男性サバイバーにとってここに述べてきた偏見から自由になることは、回復のプロセスの重要な一部です。 ※「NOMSV」(http://www.malesurvivor.org/)のホームページのコンテンツは自由にリンクできます。コピーや引用をするときは、著者とNOMSVに著作権があることを明記してください。 |
| (注1)性被害:性被害をあらわすことばには、性虐待、性的虐待、性暴力、セクシャル・アビューズなどがあります。 性虐待や性被害は、望まない性的接触全般を指します。オーラル・セックス(口を性器につけること)、アナル・セックス(ペニスを肛門に入れる、モノを肛門に入れられることも含む場合もある)、セックス(女性の膣へのペニスの挿入)などを強要されることはもちろん、性器や身体に触られたり、見られたり、見せられたり、キスされたり、性的に嫌な言葉を言われたり、チカンにあったり、ポルノ写真に撮られたりすることも広く性虐待にふくまれます。 日本語で虐待というと、残酷なとか、死にそうになったというイメージがありますが、本来の意味は、優位な立場にある者がその力を乱用して、弱い者を傷つけたり搾取することです。ですから、虐待ということばは、残酷なケースをだけを指すわけではありません。 (注2)ジェンダー:生まれながらの生物学的な性別を「セックス」(Sex)というのに対し、生まれた後に文化的につくられる性別のことを「ジェンダー」(Gender)といいます。たとえば、「男は泣いてはいけない」「女はおしとやかでなければならない」といった考えはジェンダーに属します。 (注3)ペドファイル:小児性愛者ともいいます。子どもにたいし性的な愛好を持つ人のことです。 (注4)トラウマ:性被害・虐待・地震・火事・事故・戦争などによって生じる普通とは異なる深い心の傷のことです。通常は時間がたっても簡単に癒えることがありません。心的外傷(しんてきがいしょう)ともいいます。 (注5)性的指向性:恋愛や性的な関心・興味・指向が、どの性別に向いているかということです。異性に向いている場合を異性愛者(ヘテロセクシュアル)といいます。 同性に向いている場合を同性愛者(ホモセクシュアル)といい、男性が男性に恋をしたり性の対象に選ぶときはゲイ、女性が女性に恋をしたり性の対象に選ぶにきはレズビアンということばが使われます。ホモやレズということばは差別的な感じがするので一般的には使いません。 男女両方に向いている場合は両性愛者(バイセクシュアル)、対象の性別が未決定な場合は無性愛者(ノンセクシュアル)といいます。 セクシャリティは多様ですし、年齢や状況によって揺れ動くこともあるので、単純にすべての人がこの4分類に必ず当てはまるわけではないと思います。 (2005年、くろたけ訳注) |
| 以下は、「神話と事実」の補足として、男性サバイバーたちと会話する中で、くろたけが掲示板に書いた文の転載です。掲示板での会話の文脈が分からないので読みにくいと思いますが、併せてお読み下さい。 | |
【補1】「男性サバイバー=加害者」でないことに注意! 上記の偏見6でも述べているように、「男性サバイバー=加害者」ではありません。日本では、男性サバイバーの存在が社会的にほとんど知られていないにも関わらず、男性性被害者は将来かならず加害者となるかのような偏見に接することがあります。 しかし、この「すべての男性性被害者は加害者である」という神話(偏見や誤った知識)が広まることは、極めて危険です。その危険性はやはり偏見6が指摘している通りです。北米などの調査でも、多くの男性サバイバーが加害をしていません。 もし、このような神話が広く流布した場合には、性被害にあった男の子が「自分はもはや将来、加害者になるしかないんだ」と、自分の将来に恐れおののいてしまう危険があります。 また、援助が必要なケースであるにもかかわらず、周囲から危険人物と見なされることを恐れて、家族にも被害に遭ったことを話せなかったり、カウンセリングやセラピーになどに通えなくなることもあります(注1)。 ◆ ◇ ◇ ◆ ◇ ◇ ◆ ◇ ◇ ◆ ◇ ◇ ◆ ◇ では、(男女の)サバイバーによる加害を防ぐ上でもっとも効果がある方法はなんでしょうか? そして、それ以上に重要なのが、周囲の者がそれを信じ、そして適切なサポートができることです。 被害にあった少年が加害行為(二次性加害)をしてしまうのは、結局のところ、「孤立」に大きな要因があると思います。 被害にあったことを周囲が信じなければ、トラウマ(心の深い傷)の解消も進まず、したがって加害を予防するための選択肢も限られてきます。 何度も言うようですが、上のような誤った神話が広まると、被害者はますます被害にあったことを話せなくなってしまい、いっそうの孤立が深まり、弊害が大きくなるばかりです。 ただ、被害にもとづく加害があることも事実です。だからこそ、そのようなケースでの加害を防ぐためにはどうしたら良いかという点に、周囲の人々が正しい知識を持ち、かつ適切な援助ができるようになって欲しいのです。 そのためには、繰り返しますが、サバイバーに安心して被害体験を話してもらえるような社会環境を整えることがもっとも必要なことなのです。 まずは安心と安全な環境が必要となります。そのような環境の下で、サバイバーがいろいろな感情を表現することを許すことが大切です。トラウマは、安心感のある環境で、感情や記憶をあるがままに表現してゆくことで解消されてゆくことが期待できるのです。 加害ファンタジーやさまざまな衝動についても話してゆくことが大切になりますが、しかし経験を積んだ熟練の専門職や自助グループでなければ、このような衝動を聴き、予防を考えてゆくことは難しいかもしれません。 ★ ☆ ★ 【携帯電話による支援方法】 さて、そのような準備が整った上で、加害をするリスクと防止策について考えてみましょう。 実は、サバイバーの加害は原因がトラウマにあるということがはっきりしているので、ちゃんと対策が立てられる、対応策が取れるという大きなメリットがあります。 これまで分かち合ってきたサバイバーの多くの話をから、実際に加害するリスクはそう多くないといえます。むしろ実際の加害につながる行動をすることは少なくて、加害してしまいそうだと不安になるとか、なんとなく加害衝動を感じて恐れを感じるというケースが大半でした。たとえば、よくあるのは、自分が被害にあった年齢と同じくらいの年齢の子どもに出会うと、性的に触れてみたくなるような気持ちなって、自分は大丈夫だろうかと不安になるというケースです。このようなケースは男女ともに起きるようです。 このような場合もっとも効果的な対策法は、加害するのではないかという恐れを感じたとき、その現場からただちに支援者に「携帯電話」をかけてもらって、サバイバーにその時の感情を話してもらう、つまり言語化してもらうことです。 話してもらうことで、自己の感情を客観化してもらうことができます。さらになにより重要なのは、「そのような不安な加害感情に慣れてもらう」ことが大切な支援になります。支援者は、「だいじょうぶ、あなたはちゃんと加害しないでいられるじゃないですか、ちゃんとそのよな気持ちに慣れて行くことが大事なのよ」というような支援をします。 この携帯電話による支援は、うまくできると相当効果があると思います。もちろん支援者がサバイバーの加害についてちゃんと理解ある支援者ならばかなりの効果が期待できますが、そうでなくてもただこのようなサバイバーの気持ちを聴くというだけでも十分に支援になると思います。 ちなみに、携帯電話で話しているときにもし実際に加害をしてしまいそうだと判断したら、直ぐその場から走って離れるように指示します。そして、加害のリスクのなくなったところで、もう一度話を聴き直します。 ★ ☆ ★ とはいえ、サバイバーによる加害行為は、現実には起きています。そこで、今度は別の角度から、加害のリスクが高い場合について考えてみました。 最初にしなくてはないのは、どのような状況で、どのような相手に、加害衝動を感じるかというアセスメント(評価)が必要だと思います。普通、誰に対しても、いかなる状況でも、暴力的になるということはないようです。 たとえばケースとしては、電車に乗ると女性にチカンしたくなるとか、男性にチカンしたくなるとか、道で自分が被害にあったころと同じような年齢の少年に出会ったとき衝動を感じるとか、パートナーとケンカになるとパニックになって手を挙げてしまうとか、こっそりと下着を盗むことに快感があるとか、ハイパーセクシャル(性的に活性化する)なると相手の気持ちを無視するようなリスクが高まるとか、加害者にたいし暴力で復讐したくなるとか(子どものころは加害者の方が年上で身体的にも力があったが、年月を経るに従って加害者が年老いて、身体的な力関係が逆転することもある)など。 そして、例えば、チカンをしそうなら混んでいる電車に乗らない、ラッシュ時を避けて通学や通勤するなどの対処法を考えます。 また女性に衝動を感じるなら、道で1人歩きの女性に出会ったら、即座に反対方向に走って逃げると決めておく。 他にも、深呼吸をする。10数える。大人なら10数えるのは簡単なので素数を数えるようにする。大切な家族や人の写真を財布の中に入れて置いて、その家族や人のことを思い出す。 セフティ・イメージ(心が安らぐイメージ)を思い浮かべられる訓練をしておいてそれをイメージする。 また、マスターベーションでその衝動を和らげたり発散できるなら、誰も傷つけないという点でそれも良い方法です(ただ加害ファンタジーで自分自身が傷付き驚くことがあります)。 自助グループなら、参加者の1人が1個ずつ加害を避ける方法を提案するということもできます。たとえば、ハンカチにメンバーの一人が「がんばれ」とか「一人じゃないよ」などとメッセージを書き、それを持って歩く。特別なお守りを作って身に付ける。もし加害をすれば、さらに自分と同じように苦しみを持つ被害者をさらに生み出してしまうことを仲間と話題にする(理解ある仲間にめぐまれてこのいようなことを話すことは役立ちます)。ほかに、シャワーを浴びるとか、暖かい飲み物を飲む、電話相談に話す、個人セラピーで話してみるなど。
また、パートナーや子どもに手を挙げてしまいそうなリスクがあるときには、手を挙げたくなったら自分が行く場所を決めておく。たとえば、ベランダとか、トイレとか、玄関の外とかへただちに避難すると決めておいて、衝動を感じたとき、パッとそこへ行ってしまうようにします。ともかく「その場を離れる」ということは、とりわけ有効な方法です。なお、パートナーに、なぜそこへ避難するのかいちいち問いつめられたり、逃げたと言って非難されないようにあらかじめ取り決めや説明をしておくことも必要です。それから、子どもを一人で置いて避難するときは、子どもがそこに居ても安全かどうか見てから避難するようにします。 それから、小さな子どもが被害者である場合は、お友達のプライペート・ゾーン(性器や胸やお尻)には勝手に触らないでねと話しておいたり、発達年齢に応じての適切な性教育も必要になるかもしれません。 そしてなにより、いうまでもなく、トラウマの解消が進むにしたがって、加害衝動もおさまるということも大いに期待できます。また、解離中に加害してしまう場合も、おなじように原因と対策が立てられます。 また、わたしの知っている限りでは、加害衝動を感じる人に対して、被害にもとづく加害が「再演」(注2)であることを説明するとかなり効果がある、つまりなぜ自分が加害衝動を感じるかという理由を本人が理解でき、対処もよりしやすくなることがあるようです。 加害を防ぐためには、本人が自分の心の中にある加害衝動を「感じる」ようになることがその第一歩になります。再演という概念は、その「感じる」ことの助けとなるとわたしは感じています。 というわけで、「男性サバイバー=加害者」という神話が広まらないように、ご配慮ください。 ◆ ◇ ◇ ◆ ◇ ◇ ◆ ◇ ◇ ◆ ◇ ◇ ◆ ◇ (注1)この他、セラピストが男性サバイバーを最初から潜在的加害者として扱うような治療上望ましくないリスクも生じます。 さらにわたしの立場から言うと、男性サバイバーの自助グループ=加害者の集まりと見なされてしまう可能性が生じることを、最も懸念しています。偏見が広まった結果、ようやく芽生えた男性サバイバーのためのサポートが途絶えてしまったり、性被害者に必要な情報やサポートが届かなくなってしまうことを恐れているのです。 (注2)再演とは、被害体験を克服しようとして、無意識の内に、被害者の立場や加害者の立場をくりかえし体験すること、とわたしは理解しています。 (注3)「サバイバーによる加害はあるが、それを防ぐことは可能である。また多くのサバイバーが加害をしていない」というのが適切な表現だろうと、目下のところ思います。 (注4)この他、性虐待されなかった人や、性暴力の被害を受けたことのない人が、どのくらいの割合で加害をしているのかも調べて比較してみなくてはならないでしょう。 (03年4月 くろたけ記) (補)2006年、下記のごとく加害を防ぎたいための若干の情報を追加しました。 ◆衝動が起きるきっかけや状況、サイクルなどに気づき、行動化を避ける、また生育歴や自分の心の中をよく振り返るっていうことは、みなさんよくやっているようで、どうやらこれらは基本のようです。 ◆HPに書いたように、サバイバーの場合で、加害の直接的な原因が被害体験にあるなら、その加害衝動を話すことで慣れることと、対症療法で加害を避けながら、トラウマの解消をするということじゃないかと思います。 ◆性依存症の中に加害的な行動をする人がいて、その自助グループのおかげで、加害が止まったもしくは、止めることを継続しているといういくつかのケースがあるようです。これは、アデクションセミナーで教えてもらいました。 ◆あとは、更正に取り組む加害者のホームページも少しあります。 ◆首都圏の少年院で性犯罪の矯正指導にあたっていて、『非行少年の加害と被害』を書いた藤岡淳子氏は、今、大阪大学大学院の教職です。 ◆法務省が「性犯罪者処遇プログラム」を昨年からはじめていますが、このプログラム研究会のメンバーは皆関東方面の方ばかりのようです。このメンバーに相談するのはどうだでしょう。すぐには相談に応じてくれないかもしれないが、、、。 ◆他には、DVの加害者更正はいろいろ試みがあるし、子どもを虐待する母親のためのプログラムに森田ゆりさんが開発した「My
TREE」があるから、それらの方法も参考になるかもしれません。 ◆アミティを学ぶ会も、脱暴力の参考になるかも。 ◆海外ならもっといろんな情報があるはずです。英文で検索などしてみてください。 |
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【補2】 同性愛と、同性間の性暴力をはっきり区別してください。 男性による男性への性的暴力は、同性愛ではありません。 ですから、もしあなたの加害者が男性なら、その男性から虐待や暴力を受けたのであって、その男性とセックスをしたわけでもないし、性的接触を楽しんだわけでもありません。 加害者には同性愛者も、異性愛者もいます。日本での性的いじめは、異性愛者の同級生などがおもしろがってしていることが多いようです。 また、男性から性的接触をされたからと言って、将来、被害者がかならず同性愛者になるわけではありません。 エレクト(勃起)や射精があったからといって、ただちに合意したことにはなりません。 また、加害者はあなたを支配し辱めるために、わざとエレクトさせたり射精させたりすることがあります。 エレクトや射精はセックスや自慰とは無関係に、過度の興奮や混乱・恥ずかしさ・ケンカの最中やケンカが終わってからなどでも起きることがあります。 大切なのは、あなたがそれを望んでいたか、イヤだ、止めて欲しいと思っていたかという気持ちです。 いうまでもなく、同性愛とは、同性同士がお互いの合意を尊重した上で愛し合うことです。 追記:未成年の男児も、成人男性もなんらかの性的被害を受けることがあります。 |